春天の星座たち 春の夕方に見える星座には、はっきりした中心がない。 何となく、大気も生ぬるく、星座はおぼろげに霞んでいる感じだ。 しかし、春の夫婦星。と、言われる、牛飼い座のアルクトゥルス、乙女座のスピカの二つの星が、涼しげな光を投げかけてくる頃。 春の風、桜の花、新緑と田植え。と、季節は急速に動くのである。 牛飼い座。 母のカリストと共に天に上げられて星座となった息子、アルカスの以前の姿だと言われている。 橙色の一等星、アルクトゥルスは、春から初夏を告げる星の代表で、麦の収穫の頃空に見えるので、麦星とも呼ばれる。 乙女座。 黄道十二星座の一つで、正義の女神、アストレアが横たわっている姿だと言われている。 美しい白色の一等星、スピカは、丁度アストレアが左手に持つ麦の穂のところに位置していることから、俗名は、麦の穂。 また、いかにも女性的清らかな星で、真珠星とも呼ばれている。 烏座。 海蛇座の背中にとまった形の星で、黄金の羽を持ち、人語を解する鳥であったが、大嘘をついたために、真っ黒な羽とガアガア鳴くだけの鳥にされてしまったと言われている。 獅子座。 黄道十二星座の一つ。 ネメアの森に住んでいた人食いライオンで、偽言ゼウスの命の為に、英雄ヘラクレスに退治されて天に上げられたと言われている。 海蛇座。 レル二アの谷に巣くっていた怪蛇ヒドラ。 人食いライオンと同様、英雄ヘラクレスに退治され、天に上げられた。 蟹座。 黄道十二星座の一つで、レル二アの谷でヘラクレスが怪蛇ヒドラを退治したとき、ヒドラに加勢してヘラクレスに踏み潰された化けガニだと言われている。 ケンタウルス座。 色欲に耽り酒を好む半人半馬の怪物ケンタウルスの姿。 狼を突いた形で天に上げられている。 狼座。 ケンタウルスに突かれている姿。 猟犬座。 牛飼いが左手に持つ紐の先に連れられている猟犬の姿。 コップ座。 海蛇座の背中に乗っている形で、Y字をなし、酒神ディオニュソスの酒杯だと言われている。 髪の毛座。 エジプト王エウルゲテスの妃ベレニケの美しい髪が天に上げられた。 以上、上げた十一の星座と、特別に何も伝えられてはいない、ろくぶんぎ座を含めた十二の星座が春天を彩っている――……。 >>プロローグ 1 へ <物語のTOPへ> |