TOMORROW
Stage 1 ―X'mas Present―
1///4///あとがき
                          4


着替えを済ませ、俺たち、打ち上げの会場へ。
といってもカラオケ。
軽食もここで済ませられる。
S高のサッカー部員がぞろぞろと、江ノ島に程近いカラオケの一室へ。

  「お。いーね結構広いじゃん。」

  「ここ、持ち込み自由だし、いいよね。」

  「じゃーん!!」
るも              のりと  そのう  いつく 
流雲を始め、祝、弁、慈たち後輩の声に振り返る。
え。
いつの間にか、皆一様にビニル袋を両手に持っている。
まさか。

こんなに買っちゃいました。と、流雲は元気良くいって勢い良くテーブルにそれらをぶちまけた。
お菓子、お菓子、お菓子。
それはOK。

でも。
ビール、カクテル、チューハイ、っておい。
だめでしょ、それ。

俺たち未成年だから!!
※未成年の飲酒は法律で禁止されています。

なーんて、誰もいわない……。
困ったもんだ。

  「歌えー!飲めー!食えー!」

  「るも、歌え!!」

数分もかからずに大宴会。
もう大騒ぎ。

  「るも、いきらーす!!」

すでに呂律が怪しい流雲。
でもしっかりマイクを握って前で歌う。

  「いーぞいーぞ!!」
   いなみ
  「伊波ちゃん!君のセクシーな声がききたいぜー!」
ちがや
茅さんの声に、

  「セクシー伊波いきまーす!」

マネージャーも例外じゃない。
ミニスカートもお構いなしに、前で踊って歌って大変だ。

  「伊波せんぱーい。でゅれっと、でゅれっとぉー!!」
                        かささぎ
どうやら、デュエットといっているらしい、鵲が前に飛び出してきた。
あーあ。
鵲もかなり酔ってるな。
2人は前でデュエットを大披露。

  「すごいですね。」

稲原が隣に座った。
色白の頬がピンクに染まっている。

  「飲まないんですか。」

突然、アルコール缶を俺の頬に押し付けた。
間近に稲原の顔。

  「あ、あんま飲めないんだ。」

缶の当たってる部分だけ冷たいけど、体はほてっていた。

  「そんなことゆわずに今日はお祝いなんだから、飲んでくださいよ。」

稲原がさらに近づいた。

  「こ、こら。酔っているだろ、稲原。」

俺は、どうしていいかわからなくて、なるべく優しく稲原を遠ざけた。

  「あー、先輩てれてます?かっわいー。」

稲原は満面の笑みを浮かべ、さらに大胆に俺に体を寄せた。
膝上のスカートの足を組んだ。
からかうように笑って、腕をからませ、肩に寄りかかる。
っちょ//////。
全然飲んでないのに、きっと俺の顔は真っ赤なはず。
             こそこそ  してんだよ          あやしいぞ         おまえら
  「なーに、2人でこそこそしてんらろ〜あらしいぞーおまれら〜!」

  「いっ尉折。」

でろんでろんに酔っ払った尉折が、目の前にやってきて――、
   つばな              いやらしい    こと   した  だろ
  「茅花ちゃんにいららしいことしたらろ〜!」

  「するかよ!!」

尉折は疑いの目をして、次の瞬間、俺の上を飛び越えて、

  「きゃ、尉折先輩。」

稲原に飛びついた。

  「こ、こら尉折!」

酔うと理性を失う典型タイプか!お前は。
彼女がいるくせ……。
あ。
そのすぐ側で、素面らしい檜が柳眉を逆立てていた。

  「い、尉折!離れろって!」

俺は、横たわっている尉折を引っ張り起こそうとするが――、

  「なんらろ〜!!じゃますんな〜。」

って、おい。
何いってんだよ。
           じゅみ
  「尉折先輩っ。樹緑先輩にきらわれちゃいますよ〜。」

稲原も戸惑って、檜と尉折を交互に見る。

  「じゅみ〜だれらろ、おれらつばならんひとすじらろ〜!」

ぴき。
擬音化すると、そんな音。
確かに聞こえた。
缶ビールをもったまま、檜は踵を返した。

  「あ、檜。」

尉折の奴。
いくら酔ってるからって。
傷ついたぞ、今の言葉は。

――樹緑、誰だよ、俺は茅花ちゃん一筋だよ。

だと。
よく言えるよ、んなコト。

  「檜!」

外に駆け出す檜を追った。
片瀬江ノ島、東海岸。
夕日が傾きかけた時刻。
浜辺には人がちらほら。

  「えっと、あいつ。酔ってたわけでー、だから……。」

何いってんだ俺。
もっと気のきいた言葉言えよ。
そんな俺に――、
            あすか
  「優しいんだぁ。飛鳥くん。」

振り返って、笑みを浮かべて俺に近づいた。
え。
俺の肩に顔を近づけ、俺たちは少し抱き合う格好になった。
すぐ側で、檜の肩すれすれのストレート髪が揺れる。

  「ちょ……檜?」

  「あたし、飛鳥くんのこと、スキ……だよ。」

え。//////。
俺は思いっきりうろたえた。

  「よ、酔ってるだろ、いっ檜。」

だって。
檜がこんなこと……。
尉折の彼女だし。
ひとりで困惑していたら、檜は忍び笑いをして――、

  「冗談、冗談。ごめんねー。」

俺から体を離して、笑った。
……まったく。
このカップルわぁ。
そりゃ、本気にしてたわけじゃないけど。
皆して俺のことからかいやがって。

  「怒った?」

  「おこってないけど。……もし俺が本気になったらどーすんだよ。」

マジメに、少し叱責めいて言ったつもりだったのに、

  「ぜーったい、ありえないもん。」

断定。
檜は、波打ち際まで駆けていって、後ろ向きのまま――、
                
  「でもね。その優しさは毒だぞ。」

振り向く。

  「え。」

  「優しいのはいいけど、時には突き放したりしなきゃ、期待もっちゃうよ。」
       おうな
茅花とか、殃奈、そして伊波にさ。と、付け加えた。

  「そんなつもりは……。」

  「わかってるけど。そこが飛鳥くんのいいとこだしね。」

何で、俺が説教されてんだろ。
まじでそんなつもりはないんだけど、な。
それに、期待持っちゃうよ。なんて。
稲原たちが俺のコトスキみたいじゃないか。

  「ごめん。飛鳥くんに説教しちゃった。ごめん、ごめん。」

  「そんなに俺ってからかいやすいのかな。稲原とか鵲とか、白木だって……。」

  「からかってないって。まじめにいったら恥ずかしいじゃない。」

檜は防波堤に腰掛けた。
そんな檜の言葉に、さすがに高飛車だと思ったけど、酔っているせいか、

  「それじゃ、まるで白木たちが、俺のこと……好きみたいじゃないか。」

口にした。
ら。
かきあげた檜の手が止まって、何いってんの。という顔。

  「最初からわかってるでしょ。まさか知らないとはいわせないぞ。あんだけモーションかけてるんだから。」

……んなコト、いわれたって。

  「え。本当にからかってると思ってたの?ね、ね?」

  「そんなに突っ込まないで、くれよ。」

檜は細い指を口元に持っていった。

  「ま、確かに。知ってて思わせぶりな態度とってたら悪魔よね。」

  「……。」

なーんて。と、檜は立ち上がり、戻ろうと促した。

悪魔……か。
そりゃ、好意をもってくれてるってのは、なんとなく。
何となくだよ。
わかってたけど。
でも。
本気かどうかなんて、わかるかよ。

前を歩き始めた檜が突然止まった。

  「尉折ってさ。」

本当に私のこと、好きなのかな。

  「……。」

前を向いたまま、呟いた。
やっぱり。
さっきのがかなり堪えてたみたいだ。
冗談めいてあんなこといってたけど、その背中は淋しそうで、不安そうだった。

  「あたりまえだろ。」

俺は言い切った。
クリスマスプレゼントだって、用意してるんだから。
もちろんその言葉は、口には出さずに。

  「飛鳥くんがいってくれると安心する。でも、許してやんなーい。」

両手をついて誤ったって許してあげない♪
リズムをとって檜は言い、

  「そうだ、デュエットしてやろ。三年目の浮気。そーだそーだ。」

檜の顔に笑みが戻る。
胸を撫で下ろす。
ったく、尉折のやつ。
心配させんなよな。

俺たちは、再び皆の下へむかった。
ドアをあけると相変わらずの盛り上がり。
                  しめ といて     やった   からな
  「あーじゅみらん!こいつりめとってやったかんら〜!!」
                ちがや
やはり、呂律の回らない、茅さん。
尉折の首を絞めるかっこうで、言った。
             分 際                   妹に         手 だす   なんて  なめてんのか
  「たっく、てめーのぶんらいで、おれのいもおとに、てぇだすらんてらめれんのかぁ〜!」

  「すいませんってばっ。茅さん!」

少し、酔いがさめた様子の尉折。
茅さんに謝って、樹緑を見てバツの悪い表情をした。

当然だよ。
全く。
         妹には            飛鳥                将来の           旦那   が    いるん  だぞ
  「うちのいもおとには、あすかという、しょうらいのだんあがいるらろ〜!!」

何で、そーなる。

  「あなた〜!」

  「ちょっ、稲原!」

稲原がノリで俺に抱きついた。
周りは冷やかしの言葉。
カンベンしてくださいよ。

  「おー、やってくれんじゃん。そーだ。これやろうぜ!」
      ほせ
といって、輔世さんが取り出しのは――、

  「ツイスター・ゲーム?」

  「何故もってる。負けてたらシャレになんねーぞ。」
        もりあ        よみす
殆ど素面の壮鴉さんと嘉さんが呆れ顔をした。

ツイスターゲーム。
縦4横5の、計20の丸が赤・青・黄・緑に色分けされたシートを使ってするゲーム。
ルーレットに従って、各色に手足を置いていくんだ。
右手を緑、左足を黄、って具合に。
で、先に倒れたほうが負け。
狭いシートの上で争うから、アクロバチックな姿勢を要求されたりする。

ただのゲームなんて、あなどれない。
ツイスターってぐらいだから、プレイヤーは2人。
もちろん、男同士、女同士ってわけじゃない。
勝負が白熱すれば、2人の手足は交差するし、体をまたがなきゃいけなくなる。
とんでもない体勢で、相手と密着せざるを得ない。

俺、絶対パス。

と、さりげなく背をむけたとき――、
                  あすか    きさし
  「やっぱ、今、一番人気の飛鳥 葵矩だろー!」

誰かが声をあげた。

げ。
うそだろ、ヤだよ俺。

  「誰とやる?ご指名は?」

  「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。」

俺、焦りまくり。
だって、絶対嫌だ。
でも、皆酔ってるからタチが悪い。

  「こら、先輩のゆーことがきけないのかぁ〜!」
ぬえと
鵺渡さんが、俺の制服を引っ張った。
ねや
閨さんも逃がすまいと腕を捕まえる。
輔世さんも、しまいには徭さんまでが。

  「観念しなねろ〜!」

そんな光景に、壮鴉さんも嘉さんも楽しそうに笑ってるからタチが悪い。

  「先輩!あ・す・か 先輩!行け行け!」

後輩も皆、はやし立てる。

  「はい!」

そんな中、白木が突然手をあげて――、

  「あたし、飛鳥くんとツイスターゲームやる!!」

う、うそだろ〜!!
ちょっと待ってよ。

  「おー!行け行け、い・な・み!!」

  「白木 伊波いっきまーす!」

  「ちょ、白木。」

俺がうろたえてると、

  「何で、飛鳥くん、伊波とじゃいやなの?」

そーじゃなくて。
泣きまねをする白木。

  「お前〜俺の伊波を泣かせたなぁ。」

だったら、茅さん、やってくださいよ。
何で俺なんですか。

  「行け行け、き・さ・し!行け行け、い・な・み!」

誰か代わって〜!
本当、カンベンしてくださいよ――……。


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