TOMORROW
Stage 1 ―X'mas Present―
1////5//あとがき
                           5


  「右手、緑。」

こうして、俺にとって拷問のようなツイスターゲームが、始まった。
もりあ         よみす
壮鴉さんと嘉さんのまわすルーレット。
指示に従っていく。

もう。
こうなったらやるしかないよ……。
開き直って、右手を緑色の丸の上に置いた。
         しらき
  「はい、次、白木、右手、黄色。」

白木は返事をすると、制服のブレザーを脱いで、ワイシャツ姿になった。

  「おーいーね。」
   いなみ
  「伊波ちゃん、色っぽい!」

そして俺は溜息。
早く終わってくれ。
それだけを祈る。

  「黄色ですよね。」

白木は、俺のすぐ側の黄色の丸に手を置いた。
……。
何で、そこ?
すでに俺たちは密着すれすれ。
俺は仰向けで、右手を置いて腰をおろしている。
その横っ腹の近くに、四つんばいになった白木。
絶対酔っ払ってる……。

  「あー、伊波先輩、ずるい!あたしもあたしも〜!!」
かささぎ
鵲の言葉に――、

  「じゃー、ルール変更!3人で行こう!」

はあ?
心底楽しそうに皆は騒ぎ立てる。
冗談じゃないよ、こんな狭いトコに3人って。

  「じゃ、鵲、右足、赤。」

  「はーい!」

って、まじ?
鵲は、俺と白木の間にある赤の円に立った。
        あすか
  「いーね。飛鳥、次左足、黄色。」

黄色。
はい、はい。
俺は、シートの端の緑色に右手を置いていたから、右手を軸に180度体を回して、立て膝をつくように左足を黄色においた。

あー、もう早く終わって。

  「次、白木、左足、青。」

  「飛鳥くん、足上げて!」

白木はおかまいなしに、俺の左足の下に自分の足をねじ込んだ。
仰向けで寝そべる格好だ。

周りからは相変わらず冷やかしの声。

  「あすかぁ〜伊波ちゃんのスカートのぞくなろ〜!」

覗くか!!
……とはいっても、すぐ横に白木のミニスカートが揺れてる。
目を覆いたくなるよ。
体が熱い。
もう、本当やめてくれ。

  「あすか〜うらやまし〜!」

じゃー代わってください。

  「鵲、左足、緑。」

  「飛鳥先輩、失礼します!」

俺の上をまたぐ鵲。
これからどーしろっての?
上も下も挟まれてんですけど。

  「飛鳥。おーっと。」

いつもクールな嘉さんの表情が変わった。
嫌な予感。

  「左手、緑。」

緑って……鵲の足の下をくぐらなきゃいけないじゃんか。
俺は、一言謝って、手を伸ばす。
もう、曲芸じゃないんだからさ。
色とりどりのシートを間近で見つめる。

だって、顔上げれない。
上げたら絶対に目に入ってしまう。
鵲のスカートの中。

  「白木、右足、赤。」

  「えー!」

白木が驚いた声をあげるが、俺には見えない。
赤ってどこにあるわけ。

  「ちょっと待ってくださいよ〜!」

困った声を出す。
周りのはやし立てる声はさらに高まった。

状況は飲み込めません。
そうこうしてるいうちに、白木がゆっくりと動く。
俺の左手斜め前に白木の右足がきた。
確か、左足は俺の足の下。

これはきつい。
でも早く倒れて終わってほしい。

  「さー、盛り上がってきました!頑張って耐えろよ〜鵲左手、黄色。」

  「えー、せんぱい、重いかも。」

って何だよ、わかんね……げ。
背中合わせで、鵲が俺の右手の二つ隣。
ブリッジ状態。
何て、体の柔らかいこと。
なんて、言ってる場合じゃない。

  「いーね。もう少し!」

皆、後方に集まって、鵲のミニスカート注視。
全く。

  「えっちー!」

鵲も黄色い声を上げてる。
はあ。
まるで横暴、拷問の何モンでもない。

  「飛鳥、左手、黄色。」

ほっと一息。
俺は、鵲とは逆の右手の一つとなりに左手を落ち着かせた。

  「白木、左手赤。」

  「えー!」

白木は上半身を捻るような格好になる。
俺は、胸を撫で下ろした。
あのまま俺の左手が緑の上だったら、確実に……。
白木の胸にあたってた。
ほ。

  「次、鵲、右手、青。」

淡々と嘉さん。
皆は、今か今かと崩れそうな俺たちを興味深く見守る。
何やってんだろ、俺。

鵲の右手が俺の左手の隣にきた。
って、ちょっと待てよ。
俺は上向き、鵲は下向きの状態なわけで。
倒れたら、超ヤバイんですけど。

  「きゃあ!」

そのとき、悲劇はおこった。
白木が耐え切れずに倒れたんだ。
よかったじゃないかって?
じゃなくて、ドミノ倒しになったわけ。

  「きゃあ!伊波先輩!!」

  「ちょ、鵲!」

白木が倒れて鵲を押したもんだから、鵲はそのまま俺の上へ。
そして、もちろん俺も2人の重みには耐え切れずに、ダウン。

  「やったー!!」

  「盛り上げてくれんねー!」

  「さいこー!」

周りは大盛況。

つーか、俺は鵲に押し倒された状態で身動きとれず。
//////……。
               おうな
  「いったあい。こら!殃奈!!いつまでも飛鳥くんの上にのってるな!ずるい!」

ずるいって何だよ……。
鵲は体を少し起こして、白木に舌をだして――、

  「バレたか。あすかせんぱい、感じた感じた?」

//////そーゆーことゆーか。

  「きゃはは、せんぱい。顔真っ赤ですよー!!」

あのねえ。
ともかく、俺にとって地獄のようなゲームがようやく終了した。
はあ――……。

  「じゃー続いて、わがサッカー部唯一のカップル――」
いおる    いぶき
尉折と檜に矛先が向くが、

  「私、絶対やらない。」

檜がきっぱりと断った。
   じゅみ
  「樹緑〜まだおこってんの?」

  「あったりまえ。でもね、デュエットならしたげる。」

檜は不敵な笑みを浮かべた。
そして俺に目配せ。
やるつもりらしい、あれを。

そして――、

  「3年目の浮気ぐらい多めにみろよ♪」

  「ひらきなおった、その態度が気に入らないのよ!!♪」

  「ひらきなおってないって、本当反省してます。」

めちゃくちゃ私情を込めた歌い方の檜に、周りが大うけ。
間奏に尉折が直謝り。

  「両手をついて謝ったって、許してあげない♪」

  「許してよ〜。」

周りはひたすら爆笑。
良いお仕置きだな、尉折。


そんなこんなで、お開きとなった。
外にでると、とっくに日が暮れていた。
夜風が俺のほてった体を冷ましてくれる。
はあ。
やっと帰れるよ。
し な ほ      みたか
紫南帆と紊駕の顔が浮かんだ――……。


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