TOMORROW
Stage 2 ―In Tokyo―
1//////あとがき

                             1


  「全国高校サッカー選手権大会、神奈川県大会優勝――……」
              えだち
優勝旗を高々と掲げる徭さん。
皆の喜ぶ顔、顔、顔。
割れんばかりの歓声、歓声、歓声――……。

また。
同じ夢を見た。

俺は、ベッドから上半身を起こして、髪をかきあげた。
そして、頬をつねる。
あれから、毎日、夢を見る。

  「夢じゃないんだよな。」

今日は、12月30日。
全国高校サッカー選手権大会、開幕――!!
   し な ほ
  「紫南帆、おはよう。」

  「おはよう。朝食、できてるよ。」

礼を言って、テーブルについた。
テレビのリモコンを探して、掴む。

  「6時のニュースです。」

ニュースキャスターが、丁度6時になったことを告げた。

  「今日から、全国高校サッカーが開幕します。」

TVでは、出場校を紹介している。

  「あった、あったS高。」

紫南帆が形のよい爪でTVをつついた。
何だか、まだ信じられない気持ちだよ。
俺たちの高校の名前がTVに映ってる。
               きさし
  「何時ごろ行くんだ、葵矩。」
      みたか
  「あ、紊駕。おはよ。えーと学校に7時集合だから、半すぎには出て行こうかな。」

学校で集合して、現地、国立競技場まではバスで行く。
今日は、開会式だけで、その後は近くの宿舎。
そう。
今日から東京で生活することになる。

  「じゃ、タケてやるよ。」

紊駕が外のバイクの方を指差した。

  「さんきゅ。助かる。」

きっと、その為に早く起きてくれた。
もちろん、そんなこと口にはださない。
心の中で、もう一度礼を言った。

  「そっか、今日から東京で過ごすんだね。」

  「負ければ帰ってくるけどね。」

俺の言葉に、紫南帆は、そんなことゆっちゃだめ。と、かわいくしかめツラ。
明日からのトーナメント試合。
勝ち進む試合数と宿舎での生活日数が比例する。

  「勝つの。ぜーったい。国立行くまで、帰ってきちゃダメ。」

  「わかった。約束する。」

国立。
絶対、国立まで行ってみせる。

  「じゃ、いってきます。」

今日も快晴!
俺は、紫南帆に見送られ、紊駕に送ってもらい、学校へ。

  「おはようございます。」

  「おーっす!」

学校で皆と集合して、バスに乗り込んだ。
すいていれば、2時間くらい。

東京国立競技場。
恭しく、見えてきた。
やっと、ここまで来た。

支度を済ませ、開会式の準備を整えた。
控え室で時間まで待機している間。

  「すげー、人。芝きれー。」

  「きんちょーしてきた、俺。」

俺たちは興奮しっぱなしで、グラウンドの様子を見に行ったり、そわそわしていた。
他のチームも集まってきた。

  「見ろよ。優勝旗だ――……。」

誰かの言葉に、視線を移動させる。
静岡県代表、県立S高校。
前回、優勝チーム。

サッカー王国、静岡。
そういわれるにふさわしく、皆、堂々としていた。
   あすか    きさし
  「飛鳥 葵矩――。」

え。

突然、目の前に大きな手を差し出された。
一瞬、俺は目を見開いて、呆然。
だって、その人はまぎれもなく、優勝旗を手にした静岡代表S高キャプテン。
MF、エースナンバー。
はくあ     きずつ
穿和 創さんだったから――……。

  「国立で会おう。」

  「え、あ。……はい。」

力強く俺の手を握った。
さわやかな笑顔を残して、颯爽と去る姿。

  「お、おい。今の……何で?お前、知り合いかよ?」

俺は首を横に振った。
どうして?

  「すげーじゃんか、飛鳥。あの、穿和 創に注目されてんなんてよ!」
いおる
尉折は俺の背中を叩いた。
でも、何で?

――国立で会おう。

今回のトーナメントで、静岡と戦うためには、国立まで行かなくてはならない。
国立。
全国4050校の中から、各都道府県予選を勝ち抜いた、48校(東京2校)参加の今大会。
それぞれが各ブロック、AからGまでで戦い、頂点に立つ8チーム。
そして、その8チームで戦い、勝ち残った4チームだけが、国立の芝を踏むことができる。
そして、決勝戦。
俺たちは、そこまでいかなければ、穿和さんと戦うことができない。

  「飛鳥、行くぞ。」

  「はい。」

いよいよ、開幕。
俺たちは整列して、順番を待った。

  <選手入場――!!!>

アナウンスに、大歓声が沸き起こる。

とりあえず、今は目の前のことだけを考えよう。
気合を入れた。

  <待ちに待った冬の全国高校サッカー選手権大会もいよいよ開幕。>

グラウンドにでると、アナウンスが響き渡った。
大観衆。

  <また今年も全国からよりすぐった若者たちが、ここ、国立競技場へ集結。今日、ここでは開会式のみがおこなわれ、明日から東京近郊の各競技場で一斉にキック・オフされます。そして、再びこの競技場へ戻ってくることができるわずか4校が決定します!!――さー、先頭は前回優勝の静岡県代表、S高校――!!>

続々と選手入場が始まった。
俺たちもゆっくり前に進む。

  <神奈川県代表、S高校――!!>

アナウンスに従い、入場。
やっときた。
この舞台まで。
必ず、戻ってこよう。
このフィールドに、国立競技場に――……!!


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