TOMORROW
Stage 2 ―In Tokyo―
1/////6/あとがき

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午後から、明日の試合に向けて練習に励んだ。
皆、当たり前だけど、気合が入ってる。
初戦。
負けられない。

一通りのメニューをこなしても、まだまだ不安があった。
もっと練習時間がほしい。
   あすか
  「飛鳥くん、どうぞ。」

目の前に差し出されたタオル。

  「あ、ありがとうございます。」
              ま あ ほ
3年のマネージャーの茉亜歩さん。
俺の少し怪訝な顔つきに、

  「あのコたち、スコア練習させてるの。」

茉亜歩さんが、他のマネージャーのことをそういった。
そう、茉亜歩さん以外のマネージャーが誰もいなかったのだ。

  「飛鳥くんにタオル渡したがってたけどね。」

  「は、はあ。」

マヌケな俺の返答に、大人っぽい笑み。

そっか。
この大会に負けた時点で、3年生は引退なんだ。

改めて、思った。
少しでも先輩たちといられるように頑張らなきゃ。
国立、そして、優勝――……!!


1月2日、第2回戦。
俺たちにとっての全国大会初戦。
東京駒沢競技場。
徳島県代表T高校との試合。

  「すげー観客。」

  「緊張してきたぁ。」

グラウンドは既にほぼ満員状態。

  「大事な一戦だ。波に乗れるか呑まれるか。この1戦で決まる。」
       えだち
控え室での徭さんの言葉に皆、唾を飲み込んだ。
皆、自分自身を落ち着かせて、そして気合を入れる。
負けられない。

控え室をでて――、
     はくあ
  「は、穿和さん……。」

目の前に青のジャージ。
優しい、紳士的な笑顔。

  「観戦させてもらおうと思ってね。頑張れよ。」

俺の肩を叩いた。

  「は、はい。ありがとうございます!」

そして、

  「楽しみに見させていただきます。頑張ってください。」

徭さんと握手を交わした。

  「――どうも。」

びっくり、した。
俺ももちろん、皆驚いていた。

  「キャプテン、すごい。動じないなんて。」

  「いや……ビビッて声がでなかった。まじ驚いた。」

徭さん、正直に口にする。

  「やっぱ。俺たちに注目してんだ。わざわざ来るなんて。すげー。」

穿和さんたちも、東京との試合が控えてるってのに。
余裕、なのか。

  「やーっぱり、おかしいですよ。」
るも
流雲が唇を尖らして、俺の隣に来る。

  「だあって。あの人、Aブロックですよ。何で、Eブロックの僕たちの試合を見に来るんですか!」

間延びした声。
……何がいいたい。

確かに、そうなんだ。
静岡とは、決勝までいかなきゃ、戦えないのだから。

  「お。愛知もいるぜ。」

  「本当だ。順当にいけば俺たちと当たる。」
けおと
華音さんたちだ。
この後、ここで試合なんだ。

  「ったく、昨日であったやつ、嫌なやつばっかだったぜ。」
いおる
尉折は腕を組んで胸を反らした。

  「でも、僕、華音さん好きですよ。」

にっこり満面の笑みの流雲。

  「てめーは、おごってもらったからだろ。」

そう、結局、流雲は華音さんにお昼をごちそうになっちゃったんだ。
本当に、遠慮を知らないっていうかなんていうか。

  「華音さーん!」

大きな声で、手を振る流雲に華音さんも微笑。
まったく、肝が据わってるというか……。

  「そろそろ行くぞ。」

キャプテンの声に再び皆の顔が引き締まった。
アップもして、準備万端。

  <全国高校サッカー選手権大会、2日目、第2戦。徳島県代表T高校、対神奈川県代表S高校。連日の晴天に恵まれ、休養日も有意義に過ごしたことでしょう。>

アナウンスの響く中。
既に歓声が沸き起こっていた。

  <全国常連T校にどういった試合展開を見せるのか。初出場S高校。>

さあ、初戦。
頑張らなきゃ!!
ここで負けたら、今まで練習してきた意味がない。
絶対に。
絶対に勝つ。

  <茶と白のユニフォームがT高校。水色と白がS高校です。さー、スターティングメンバーの紹介です――……>

俺たちは円陣を組んだ。

  「ここまで来れたのは、マグレじゃない!実力だ!!俺たちは強い!いくぞ!!」

  「お――!!!」

  <……両チームとも気合十分なようです。>

実況中継が、T高のメンバーを紹介している。
       にのみち  ゆいご                                                                              おもね  まさてる
  <FWの二導 遺午。レフトサイド。脅威の足の長さを誇ります。ライトサイドの阿 将央。100メートル10秒台という俊足の持ち主です。――そろそろホイッスルが鳴るようです。>

アナウンスが途切れたところ。
甲高いホイッスルが、晴れ渡る冬空に鳴り響いた――……。


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