TOMORROW
Stage 4 ―Meet Again―
1/////6/あとがき

                           6


  <第2試合Eブロック代表、神奈川S高校、対Fブロック代表、鹿児島K高校。先ほど平塚で行われた試合、10対0で静岡の圧勝。そして、この試合と今平塚で行われようとしている試合で、全国ベスト4が出揃います。>

今日を終えると、明日の休養日を経て、国立。
この試合を勝ったら、念願の国立だ。

  「おねがいしまーす。」

コインが青空に舞う。
俺たちが先攻。

  「よー、この間の兄ちゃんジャン。」

え。
思わず横を向く。
鹿児島のベンチ。
                         あすか    きさし
  「あんときは、恥じかかしてくれたなぁ。飛鳥 葵矩、てめーだよ!」

真っ赤に染めた髪。
耳いっぱいのピアス。
公園で文句をつけてきた、あの男たち。

  「シカトすんなよー、てめー。」

試合中だぞ。
ベンチから暴言を吐くなんて。

  「なんだ。あれ。」
いおる
尉折が横に来た。

  「うん。この間、ちょっと。」

マナーのなってねーやつら。と、吐き捨てる。
本当だよ。
その後も奴らは人のミスを平気で笑い飛ばしていた。
大声で笑ったり、悪態づいたり。

  「うるせー外野だな。」

尉折がにらむと、

  「神奈川の11番、へたくそー!」

  「あー?んだと、このやろう。」

  「尉折!」

俺の制止に、わかってる。と、試合に集中。
何て奴らだ。

  「7番のチビ!空中戦大丈夫なのかぁ?」

誰も注意しないなんて。
何なんだよ。

  「むかつきますねー。あいつら。」
るも
流雲もしかめっつら。
審判も、気がついていないのか、一向に止める気配もなし。
それをいいことに、野次を飛ばしまくってる。

そんな雰囲気の悪い中、俺たちは戦わざる終えない状態で、後半を迎えた。

  <後半30分。均衡破れず。両チームとも無得点です。>


一瞬。
場内が静まり返った。
俺たちも何が起きたのか、その大きな物音に、注視する。

  「あんまでけー口たたいってから、ゴールと間違えたよ。今度んなマネしてみろ。そのツラにシュートすんぞ!」
わしは
鷲派……。
暴言を吐くベンチに、鷲派がシュートを放ったのだ。
ベンチ内も唖然。

  「いい人じゃないですか。」

  「かっこつけてんだけだろ。」
や し き
夜司輝と尉折。
尉折はそう言ったが、きっと認めている。

  「べっつに、お前らのためなんかじゃねーぞ。俺様の格が落ちるからな。」

照れ隠しのように言った、鷲派。
さんきゅう。
こいつも、サッカーが好きなんだ、とっても。

もちろん、俺だってその気持ちなら負けない。
勝って皆で国立にいくんだ。
あの芝の上にもう一度。

  <……ちょっとしたアクシデントがありましたが、後半戦試合再開です。>

  「飛鳥先輩!」

夜司輝からパスを受け取った。
ずっと、夢に見た国立。
手放さない、絶対。
国立への切符を手に入れてみせる。

  「いっけ――!!!」

  <でました!神奈川エースストライカー飛鳥 葵矩の目の覚めるようなシュート!!!均衡破れるか――!!>

お願いだ、入ってくれ!

  <後半35分、どーだ、きまるか?あー、キーパーパンチング!!>

あきらめないぞ!
絶対。

  <ボールが跳ね返った!鹿児島カウンターか!!>

時間がない。
カウンター食らってたら、時間がない。
最後のチャンス!
ここで、いれなきゃ。

  「飛鳥!いっけー!!」

  「飛鳥―!」

  <ちょっと大きいぞ。これは、飛鳥、とれるか?>

  「くっそ、渡すか。」

延施さんがチェックに来る。
空中戦じゃ、身長差で負ける。
                                      こまき     のぶし
  <2人とも飛んだ――!!鹿児島キャプテン、キーパーの駒木 延施のほうが、身長差で有利かぁ――!!>、

くっそ、どうしよう。

  「もらった!」

延施さんの声が頭上で聞こえた。
絶対渡さない!
これは、全国への切符なんだ――!!

  <おっとやはり、駒木のほうが頭1つ分でた。あー!!しかし、飛鳥、あきらめません。駒木の落としたボールをかかとでけりあげます、ヒールキック!!おおきく2人の頭上を越える――!!>

尉折!!頼む!!!

  「オーライ!!」
                                               てだか     いおる
  <ボールは、大きく鹿児島のゴールへ向かいます。待つのは神奈川11番、豊違 尉折――!!>

尉折がワントラップしてしっかりキープ。

  「くっそ、待て!」

  <鹿児島もあきらめません!10番エースストライカーの鷲派 烈火、必死に豊違に食らいつきます。さー、もう時間がない。最後のチャンス!神奈川先制、決勝点となるかぁ――!!>

尉折!!!

  <ゴール!!!入った、入りました!!!豊違のシュート!みごとにゴールネットに突き刺さりました!!そしてここで終了だ!!ホイッスルが高々と鳴り響いた―!試合終了!!>

神奈川S高校、ベスト4決定――!!!

  「尉折!!!」

  「飛鳥ぁ!!やった、はいったぜ!!」

がっちり、俺は尉折の肩を抱いた。

  「いおる先輩!!」

  「尉折先輩!!」

皆で、尉折を激励する。
勝った!!
勝ったんだ。
俺たちベスト4.

  「国立にいけるんだ――!!!」


  「完敗だ、飛鳥。あんな体勢でヒールキックなんて。」

絶対優勝しろよな。と、延施さんが手を差し伸べた。
礼を言って、握りかえす。

  「鷲派。」

尉折が鷲派に手を出すと――、

  「まだ来年がある、俺のチームが夏冬、お前らに勝って2対1。――ふん。とりあえず、今回は認めてやらぁ、国立いって恥じさらしてこい!」

尉折の手を振り払った鷲派。
優しさと激励が込められていた。
尉折も納得済みで、頷いた。

  「飛鳥ちゃん!おめでとー!」
   し な ほ    みたか
  「紫南帆。紊駕、ありがとう。」

言葉にならない。
ベスト4。
憧れていた、夢の国立、あさってにはそこに立てる。


宿舎にもどった俺たちは興奮冷めらやず、騒がしかった。
ムリもない、俺だって胸がおどるほど、嬉しい。

  「おいおい、まじかよー!」

  「何々?」

先輩たちがなにやら話しをして驚いている。

  「明日、テレビ出演だってよー!」

  「え――!!」

どうやら、大会の特番で、ベスト4チームに生出演の依頼がきたらしい。
なんと、全国放送。

  「だれだれ?誰がでるんですか?」

  「そっりゃー僕でしょ!」

自信満々にいう流雲を皆が小突いて――、

  「飛鳥先輩に決まってるじゃないですかー!」

え……。
奥のほうからの声。
マネージャー5人が勢ぞろいで、お茶をもって現れた。

  「ね、ね。先輩。全国通算4得点なんて、記録ですよ――!」
いなはら
稲原が俺の側にくっついた。

  「そうですよ、飛鳥先輩がでなくて誰がでるんですか!」
      かささぎ                                            しらき
反対側に鵲、その2人を押しのけて、そーだ。と、白木。

  「ま、それは妥当だと思うけど、なんかシャクだな。」
      ちがや
冗談ぽく茅さん。
そういえば、茅さんって……。

  「やっぱ、俺もでるしかないっしょ!」

尉折が胸を張ったのにたいして、皆のブーイング。
             よみす                                           みま                           もりあ
で、どーすんの。と、嘉さんが相変わらずクールに尋ね、神馬と飛鳥は定番。と、壮鴉さん。
俺は、できればそうゆうの出たくないんですけど。

  「何でー!だめですよ!!」

否定した俺に稲原たち、3人が声を揃えた。

  「意外だな。3人がそういうなんて。」
        いぶき
そんな光景に檜が忍び笑いをして――、

  「全国放送よ。もっとファン増えちゃうじゃないの。」

え……。

  「あー、そっか。やっぱ、ダメ!飛鳥せんぱい、テレビでちゃダメです!」

……。
でも、すごいな、TVなんて。
      はくあ
もちろん、穿和さんもでるんだろうな。
でも、このTV出演が、思いも寄らぬことを起こすことを、俺はまだ知らなかった――……。


  「おはよう。」

  「あ、おはよう、早いね。まだ寝ててもよかったのに。」

1月6日、休養日。
顔を洗いにいったら檜に会った。

  「なんか、6時すぎたらもう眠れなくて……。」

  「生活習慣がきちんと身についてるのね。」

大人っぽい笑いをする。

  「あ……。」

思わず声にだした俺。
視線は檜の細く長い薬指。

  「もらったの。」

頬を少し、ピンクに染めた。
尉折がクリスマス・プレゼントに贈ったリング。
幸せそうだ。

  「すごく、嬉しくて。なんか、一生はずせそうにないや。」

素直に檜は口にした。

  「よかったね。」

  「うん。」

少しの間があって――、

  「そうだ、今日TVでるんだよね。あーあ。今日からますます有名人だね。」

恥ずかしさを隠すように、少し大きな声で言った。
        えだち
そう、結局、徭さんと俺と、尉折がでることになっちゃったんだ。

  「有名人なんて……そんなことないよ。」

  「尉折のやつ。恥ずかしいこといわないようにちゃんと見張っててね。」

檜の言葉に、了解。と、示す。
午前8時。
全員起床。
2人を除いて。

  「こら、流雲、朝だってば!」

夜司輝が慣れた手つきで流雲の布団をはぐ。
引きずり起こしている。

  「尉折。お前も起きろ!」

今だ熟睡中の尉折。
肩を揺さぶっても布団をはがしても無理。
枕をしっかり抱きかかえている。
ったく、寝起き悪いんだから。

  「もー知らないぞ!」

あきらめて、その場を去ろうとしたら――、

  「じゅみー!!」

でー!!
いきなり俺の腕を思いっきり引っ張って、布団に引きずり込んだ。

  「じゅみー愛してるー!」

  「やめろ!!俺は檜じゃない!」

それはわかった!
でも、寝ぼけるな!!!

  「こら、尉折!」

つかまれた腕を振り払う。

  「すきだー!」

それでも、尉折の腕は俺に絡んでくる。
ってさ、気色悪いな!
ったく、やめろつーの!!

  「一生ねてろ!!!」

俺はおもいっきり尉折を突き飛ばして、枕を投げつけた。

  「ってー!あ、あすかぁ、おっす。」

あのねぇ。
やっとのことで起きた尉折を連れて――、

  「な、な、私服じゃだめなの?」

  「あたりまえだろ、何のためにテレビでんだよ。」

ちぇっ。と、口を尖らして、かっこよく決めようと思ってたのに。なんていってる。

  「全国放送だぜ。もー皆みてんじゃん、恥ずかしいなー。」

心にもないことゆーな。
それより早く支度してくれ!

  「やー、もしかして、芸能人とかいるよなー!サインもらわなきゃ!」

あのね、まったくミーハーなんだから。

でも。
いたんだ、芸能人。
それは、なんと――、

  「こんにちは、今日は、今行われている全国高校サッカー大会ベスト4の代表選手と今、流行の若手バンド、THをゲストにお迎えしていまーす。」

司会の女性が元気よく挨拶。
そう。
ティーエイチツー
TH
3人組の若手バンドで俺の小学校の同級生。
そして、尉折の幼馴染でもあるんだ。

  「ちょっとお伺いしたところ、THの皆さんは、神奈川代表の飛鳥くんと豊違くんと同級生なんですって?」

  「そうなんです。」

偶然の再会。
THは、タカ、エイ、モアの3人。
はおか    たかつ    ひらが    ひろた
葉丘 天架、永架、模淡の名前をもじっている。
三人は、兄弟妹。
尉折もすごく驚いていた。

  「では、選手の皆さんを紹介させていただきます。」

女性はよどみなく、紹介を始めた。
     はくあ         するが                かつおぎ  えにし
静岡の穿和さん、駿牙さん、そして喝荻 縁さん。
      とうみ         つぎら             ひらね
北海道の凍未さん、津吉良さん、片根さん。
くりま
栗馬は来ていないらしい。

それにしても、偶然の何者でもなかった。
葉丘たち……。
ちょっと、まだ抵抗がある俺です。
あ、意味がわからないかた、すみません、Planet Love Event 第三章 Ego-Ist恋愛感情を参考にしてください。(できれば俺からはお勧めしたくないのですが……。)

そして、俺たちの紹介もすんだ。
なんか、どのカメラを見て話しをしたらいいのか、全然わからなくて、かなり上がってしまう。

  「やっぱり、THとしては、神奈川の応援を?」

マイクが永架に振られた。
緊張する様子も見せず、黒の長髪を後ろでまとめて、レザーのパンツの足を組んだ。

  「そうですね、頑張ってほしいです。」

  「もちろん、皆さんに頑張ってもらいたいですね。」

天架が言葉をつなぐ。
模淡は笑顔を終始崩さなかった。

まさか。
こんなところで、再会するなんて。
尉折を見た。
笑顔がない。
……?

このとき、俺はまだ気がついていなかった。
尉折の忘れかけていた感情が、蘇りつつあることを――……。


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