

3 「何を根拠にそいことゆーかなぁ。」 るも 流雲がBIG WAVEは絶対に来る。と、断言した言葉に、呆れてクロス。 今日も穏やかな波が、流雲たちのサーフボードの下を通り過ぎる。 限りなく、青い空の下。 今日も5人、海に身を任せている。 「こんきょ?そんなのないってぇ。」 俺が来るといったら、来るのさ。と、自分が根拠だと言わんばかりの流雲にクロスたちは溜息。 や し き 「夜司輝はどう思うわけ?」 「ん……周期はあるかもしれないけど、確実じゃない。」 でも。と、言葉をきって――、 「流雲の根拠にかけてみたいな。」 軽く笑った夜司輝。 「来るって願ってるってこと?そりゃ、俺らだって一緒だけどさぁー。……ってアレ。流雲は??」 竦が辺りを見回す。 さっきまで、一緒に波に揺られていた流雲の姿がない。 「はぁ――っ。」 クロスが大きな溜息をついた。 3人がクロスの視線を追う。 「おねぇさん!なまえなんてゆーの?」 「流雲!!」 いつの間にか、浜辺で女の子と戯れている流雲。 4人が呆れ顔で近づく。 女の子たちもまんざらではなく、流雲のことをかわいー、などといいながら、笑顔。 女の子たちが姿を消して――、 「ったく、流雲はぁ。何やってんだよ。」 クロスの声に、何が?と飄々とした顔つきの流雲。 ・ ・ ・ ・ ・ 「流雲ってさぁ。何か愛嬌あってつーか。女の子うけいいよね。」 隼弓が半ばうらやましそうに、呟いて、 「そうそ、いっつも勝手やってるくせに。先輩とかからもかわいがられてんしよぉ。」 竦も倣った。 「いっやぁ、そんなにホメてもらっちゃ困るなぁ。」 ……3人が、ものずごい呆れ顔をしたのは、言うまでもない。 「あれ、夜司輝どーしたの。」 今まで沈黙を守っていた夜司輝。 何でもない。と、いって視線をずらした。 「例のコですねぇ。」 にぃーっこり。不気味な笑いを見せた流雲は、夜司輝の耳元でささやいた。 夜司輝が見ていた視線。 ワンレンの肩までのボブヘア。 あの時、泣いていた女の子だった。 最近、この浜辺で良く見かける。 センチメンタル風を漂わせ、いつも独りで海を見ていた。 「今度こそ、名前きいてこよー!」 「え。あ、流雲!!」 言葉を言い終えるかいい終えないかのタイミングで、流雲は駆け出した。 浜辺に足跡が残る。 その後を慌てて、夜司輝が追った。 「おねぇーさん!」 女の子が振り返るのを見かねて――、 「いつも海、見てますよね。好きなんですか?」 不意をつかれたような顔を見せたが、優しく大人っぽい笑みではにかんだ。 「うん。あなたたちもでしょ。」 「はい。大好きですよぉ〜!愛してます!」 流雲のキャラクターに親しみを覚えたのか、女の子はさらに笑顔を作った。 「なまえ、なんてゆーんですかぁ?僕は、流れる雲ってかいて、流雲ってゆーんです。」 ま あ ほ ゆはず ま あ ほ 「茉亜歩。由蓮 茉亜歩。」 流雲は満足そうに笑った。 ほしな や し き 「あ、こいつ。夜司輝ってゆいます。星等 夜司輝。」 あわてて追いかけてきた夜司輝の肩を叩く。 夜司輝は、頬を赤く染めて、どうも。と、小声で挨拶をした。 「よろしく。」 茉亜歩は、笑顔を崩さず夜司輝と挨拶を交わした。 そんな様子を、流雲は微笑んで見て――、 「茉亜歩さん。こーこーせーですよね。S高の。」 制服で判断して尋ねた流雲に、茉亜歩は、S高校の2年だと頷いた。 「流雲くんたちは?」 「K中の3年です。」 「じゃ、家も腰越?」 茉亜歩は、海を背に右手を見る。 「私は、藤沢市なんだけど、鎌倉市との境だから。近いね。」 「へぇーそうなんですか。」 終始、流雲が話しを盛り上げて、茉亜歩の笑顔が絶えることはなかった。 そして、茉亜歩が家路へ戻る様を見届けて――、 「や・し・きくん。ホレたね?」 「えっ?」 唐突な言葉に、夜司輝の顔が真っ赤になった。 流雲の得意げな表情。 「ったく。お前らぁ、ナンパしてんなよ。」 3人が駆け寄って来たので、なおさら夜司輝の顔に赤みが増した。 耳まで赤い。 「きーてきーて!!夜司輝がねぇー!!」 瞬間。 「うぐっ。」 流雲の唸り声。 夜司輝が流雲の口をおもいきりふさいだのだ。 「そんなんじゃないんだからな。わかった?」 「ぐう。」 口をふさがれたまま、夜司輝の顔を見て、声にならない声をだして頭を縦に振った。 それを見て、夜司輝は、ごめん。と、手を離した。 「ぷはーっ。死ぬかと思った。ねー!!みんなぁー!!」 「流雲!!!」 流雲は、夜司輝の隙をついて――、 「夜司輝が、今のコにホレたんだってぇー!!」 油断も隙もないやつである……。 「へぇー。」 3人はじぃーっと夜司輝を見つめた。 マスターの店。 「そんなんじゃないの。本当にっ。」 顔の前で大きく手を振る夜司輝。 まだ頬は赤い。 「ほぉ。夜司輝がねぇ。」 マスターはほほえましい。と、優しい笑みをした。 「でも、年上だろ?」 「高2っしょ?」 「別に年なんか、いんじゃね?」 竦に隼弓にクロス。 3人の言葉に、本当にそうゆんじゃないんだから。と、静かにストローでオレンジジュースを吸った。 「なぁに。恋をするのは、悪いことじゃないんだぞ。夜司輝。」 頭を叩かれて、口をすぼます夜司輝。 自分でもわからないが、気になる。 あの少女が、気になってしまう。 「この店、客いないよねぇ〜。」 流雲が、店内を見回した。 流雲たちの他の客はいない。 「それをいうなよぉ〜夏休みに入ったら賑わうんだ。」 マスターはうなだれてから、語尾を強めた。 あともう少しで夏休みである。 「そっかぁ〜夏休みだぁ。」 流雲はイスの背もたれによりかかって、のけぞった。 満面の笑み。 「でもさ、その前に期末テストだよ。」 「げぇ。そいことゆーなよ。隼弓のアホー。忘れてたのにぃ〜!」 「ばか。忘れてどーすんだ。」 流雲を叩く竦。 この学期末テストの結果が、高校を決める指標になる。 受験生。 そろそろその重みが肩にのしかかってくる時期でもあるのだ。 「あ。やばい!塾!!」 「マジ?マスターごっそさん!」 夜司輝が腕時計を見て、声を上げた。 その声に皆もあわただしく立って、店を後にした――……。 >>次へ <物語のTOPへ> |