7
登校日。
クソ暑い外。クソ寒い教室。
「澪月。 澪月ぃー。
澪月 陽色ぉー。」
間延びした担任の出欠確認。
やっぱいないか。と、言葉外。クラス名簿を閉じようとした。
一学期にも何度か同じ光景を見た。
朔弥先輩の苗字に聞き覚えがあったワケ。判明。
澪月―――珍しい苗字。おそらく兄弟。
俺は、勝手に優しそうな、人の良さ気な朔弥先輩を思い浮かべた。
「はい、はい。はーい!!」
その人物は、廊下からバカでかい声で叫んで、ドアを蹴って開けた。
「澪月 陽色。参上っス。」
おそらく初めて見た。一度見たなら忘れねぇ。
澪月 陽色は、オレンジ色のとさか頭。大きな目鼻口。甲高い声。
ガキのような風体。日焼けか地黒か、褐色のドチビだった。
「おお。来たか。」
担任の先生は、久しぶりだ。と、ありえねぇ言葉で迎え入れた。
全く朔弥先輩と似てねぇ。
朔弥先輩は、どっちかってーと色白。温厚で人当たりが良い。
B×Bでも仲間から信頼されている感があって、年齢より大人びている。
オレンジのとさかは、突然。
俺の視線に気が付いて―――いや。俺を探し当てて、こっちに向かってきた。
「
維薪くん!だよね!」
「あぁ?」
俺の机に両手を置いて、意味もなく叩く。
朔兄から聞いた。と、バカでけぇ声。
「すげぇな、単車転がせんの。かっこいーっしょ。EX-4。」
それから、ありがとう。朔兄助けてくれて。と、まくし立てた。
一瞬何語か判りかねた。早口で滑舌の悪いしゃべり方。
そのおかげか、先生は戯言ととったらしい。
座れ。と、オレンジとさかを促した。
「何、維薪。バイク運転したの。」
察し良く後ろの席のボケ
天が突っ込んできた。
えー、何それ。と、 アホ
空まで騒いだから、うるせぇ。と、一喝。
「俺、父ちゃんの仕事のカンケ―で、アジアを転々としてたんだ。」
休み時間。
頼んでもいねぇのに、オレンジとさかは、俺の机の前で説明しだした。
アホ空がお得意のすごいねぇ。を連発して、ボケ天が興味なさそうに居る。
両親は共に日本人。
だが、建設関係の仕事で、東南アジア、中国など、数年単位で生活していた。
去年日本に落ち着いた。らしい。
学校にはあまりなじめない。と、言った。
そういえば朔弥先輩もあんま学校には来ていない。と、言ってたっけ。
「でも、俺。維薪くんにお願いがあって、今日来たんだ。」
「はぁ?」
オレンジとさかは、朔弥先輩は自分の身代わりで殴られた。と、言った。
あの、江ノ島での平塚との一件。
あの後、どうなったかは知る由もないが、抗争とかにはなってない。
オレンジとさか曰く、オレンジとさかの為に朔弥先輩や
氷風が取り計らった。
「……おさまったんなら、いんじゃね。」
「俺のプライドが許さねぇよ。朔兄をあんなんにして。」
オレンジとさかは意気まいた。つまり復讐したいわけか?
俺が問うと、誤解を解きたい。と、言った。
本当は自分のせいだ。と、わざわざ平塚の奴らに言いに行く。らしい。
バカだろ。バカ以下。理解不能。
氷風や朔弥先輩の計らいを無にする行為。いや、間違えれば抗争再開。
「朔兄さん?の優しさだから。それは。」
受け入れていんじゃないかな。と、アホ空。
相変わらず大真面目に諭す。オレンジとさかは首を横に振る。
「納得いかねぇ!朔兄がケガする理由なんて、ない。」
譲れねぇ。俺の責任なんだ。だから、真実を話しに、正しに行く。と、豪語。
「行くにしてもトップには伝えるべきだよ。」
しれっ。と、話に入ってくるボケ天。正論をぶちかます。
当然オレンジとさかは一蹴。止められるに決まってる。と。
ラチがあかねぇ。
「朔弥先輩の汚名を晴らしたいつーわけか。」
オメイ?と、一瞬首を傾ける。
すかさずアホ空が通訳して、Yes,Yes!と、バカでけえ声でうなづいた。
「で、何で俺なんだよ。」
独りで行けよ。と、吐き捨てる。
オレンジとさかは、維薪くん、ケンカ強いんでしょ。と、目を輝かせた。
つまり。用心棒。かよ。
お願い。目の前でオレンジのとさかが上下する。
「……。」
自分が
袋になるのも覚悟ってわけか。または、ケンカに自信あり。か。
俺は、数秒考えて、条件。と、言い放った。
「平塚の
族に。じゃなく、
個人に伝えに行く。それで、いいな。」
B×Bのメンツ。オレンジとさかの要求。朔弥先輩の潔白証明、汚名返上。
すべてを満たす最善の方法。
こじれたとしてもタイマンで何とかなるだろ。いや、何とかしてやるわ。
「で、陽色くんは何したの?」
ボケ天が口にした。
朔弥先輩―――本来はオレンジとさか。が鉄パイプで殴られた理由。
「え。……女、横取りした。」
はぁ?
痴話げんか。くっだんねぇ。それで鉄パイプかよ。
どうやら女を横取りされて逆上した平塚の男が殴り込みに来た。らしい。
そりゃ、朔弥先輩、災難だわ。
でも、本当はこのオレンジとさかだったと知ったら逆にヤバくねぇか。
「俺が女の子に、B×Bの澪月だ。ってゆっちゃったから。」
あのとき集会にでてなかったから。と、自分を責めた。
その女は。と、問うと、もう振られた。と、いった。ため息。
だいたいどんな女がこいつに横取りされんだよ。
まじ、くっだんねぇ。
とりあえず、相手の男の素性はわかっているらしい。
放課後、相手の学校へ向かうことにした。
学校―――茅ケ崎市立D中学校。国道134号沿い。
いきなり会う可能性は低い。
知り合いを見つけて、連絡先を渡す。コールバック待ち。
そいつが連絡先を知ってれば、会う手筈をつけてもらう。
そう上手くはいかねぇだろうが。
「で。なんでお前らもついてくんだよ。」
茅ヶ崎駅へ向かうJR車内。アホ空とボケ天を睨む。
オレンジとさかとアホ空はチビ同士意気投合。心強い。と、オレンジとさか。
ボケ天は、ヒマだから。と、一言。俺は舌打ち。
電車は無慈悲に到着を告げた。
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あとがき
コロナに豪雨。どーなってんでしょ、日本。いや、世界は。
でもそんなのカンケーねぇ。と、相変わらず妄想中の湘。
陽色登場!
父親譲りの誠実なコ。でしょ。(笑)
4枚目→
Over The Top 0
ついでにヒマ人の湘は、トリオのらくがきもUP。
5枚目♪
いよいよ大詰め。えー。もうおわっちゃうのかぁ。と、僕が一番残念。(笑)
次は海空の話書こ♪
「空」おわらせろや。と、どっかから声が……
2021.8.15 湘