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登校日。
クソ暑い外。クソ寒い教室。

 「澪月。 澪月ぃー。澪月 陽色れづき ひいろぉー。」

間延びした担任の出欠確認。
やっぱいないか。と、言葉外。クラス名簿を閉じようとした。
一学期にも何度か同じ光景を見た。
朔弥さくや先輩の苗字に聞き覚えがあったワケ。判明。
澪月―――珍しい苗字。おそらく兄弟。
俺は、勝手に優しそうな、人の良さ気な朔弥先輩を思い浮かべた。

 「はい、はい。はーい!!」

その人物は、廊下からバカでかい声で叫んで、ドアを蹴って開けた。

 「澪月 陽色。参上っス。」

おそらく初めて見た。一度見たなら忘れねぇ。
澪月 陽色は、オレンジ色のとさか頭。大きな目鼻口。甲高い声。
ガキのような風体。日焼けか地黒か、褐色のドチビだった。

 「おお。来たか。」

担任の先生は、久しぶりだ。と、ありえねぇ言葉で迎え入れた。
全く朔弥先輩と似てねぇ。
朔弥先輩は、どっちかってーと色白。温厚で人当たりが良い。
B×Bビービーでも仲間から信頼されている感があって、年齢より大人びている。

オレンジのとさかは、突然。
俺の視線に気が付いて―――いや。俺を探し当てて、こっちに向かってきた。

 「維薪いしんくん!だよね!」

 「あぁ?」

俺の机に両手を置いて、意味もなく叩く。
朔兄さくにいから聞いた。と、バカでけぇ声。

 「すげぇな、単車転がせんの。かっこいーっしょ。EX-4。」

それから、ありがとう。朔兄助けてくれて。と、まくし立てた。
一瞬何語か判りかねた。早口で滑舌の悪いしゃべり方。
そのおかげか、先生は戯言ととったらしい。
座れ。と、オレンジとさかを促した。

 「何、維薪。バイク運転したの。」

察し良く後ろの席のボケてんが突っ込んできた。
えー、何それ。と、 アホそらまで騒いだから、うるせぇ。と、一喝。

 「俺、父ちゃんの仕事のカンケ―で、アジアを転々としてたんだ。」

休み時間。
頼んでもいねぇのに、オレンジとさかは、俺の机の前で説明しだした。

アホ空がお得意のすごいねぇ。を連発して、ボケ天が興味なさそうに居る。

両親は共に日本人。
だが、建設関係の仕事で、東南アジア、中国など、数年単位で生活していた。
去年日本に落ち着いた。らしい。
学校にはあまりなじめない。と、言った。
そういえば朔弥先輩もあんま学校には来ていない。と、言ってたっけ。

 「でも、俺。維薪くんにお願いがあって、今日来たんだ。」

 「はぁ?」

オレンジとさかは、朔弥先輩は自分の身代わりで殴られた。と、言った。
あの、江ノ島での平塚との一件。
あの後、どうなったかは知る由もないが、抗争とかにはなってない。
オレンジとさか曰く、オレンジとさかの為に朔弥先輩や氷風ひかぜが取り計らった。

 「……おさまったんなら、いんじゃね。」

 「俺のプライドが許さねぇよ。朔兄をあんなんにして。」

オレンジとさかは意気まいた。つまり復讐したいわけか?
俺が問うと、誤解を解きたい。と、言った。
本当は自分のせいだ。と、わざわざ平塚の奴らに言いに行く。らしい。
バカだろ。バカ以下。理解不能。
氷風や朔弥先輩の計らいを無にする行為。いや、間違えれば抗争再開。

 「朔兄さん?の優しさだから。それは。」

受け入れていんじゃないかな。と、アホ空。
相変わらず大真面目に諭す。オレンジとさかは首を横に振る。

 「納得いかねぇ!朔兄がケガする理由なんて、ない。」

譲れねぇ。俺の責任なんだ。だから、真実を話しに、正しに行く。と、豪語。

 「行くにしてもトップには伝えるべきだよ。」

しれっ。と、話に入ってくるボケ天。正論をぶちかます。
当然オレンジとさかは一蹴。止められるに決まってる。と。
ラチがあかねぇ。

 「朔弥先輩の汚名を晴らしたいつーわけか。」

オメイ?と、一瞬首を傾ける。
すかさずアホ空が通訳して、Yes,Yes!と、バカでけえ声でうなづいた。

 「で、何で俺なんだよ。」

独りで行けよ。と、吐き捨てる。
オレンジとさかは、維薪くん、ケンカ強いんでしょ。と、目を輝かせた。
つまり。用心棒。かよ。
お願い。目の前でオレンジのとさかが上下する。

 「……。」

自分がになるのも覚悟ってわけか。または、ケンカに自信あり。か。
俺は、数秒考えて、条件。と、言い放った。

 「平塚のに。じゃなく、個人・・に伝えに行く。それで、いいな。」

B×Bのメンツ。オレンジとさかの要求。朔弥先輩の潔白証明、汚名返上。
すべてを満たす最善の方法。
こじれたとしてもタイマンで何とかなるだろ。いや、何とかしてやるわ。

 「で、陽色くんは何したの?」

ボケ天が口にした。
朔弥先輩―――本来はオレンジとさか。が鉄パイプで殴られた理由。

 「え。……女、横取りした。」

はぁ?
痴話げんか。くっだんねぇ。それで鉄パイプかよ。
どうやら女を横取りされて逆上した平塚の男が殴り込みに来た。らしい。

そりゃ、朔弥先輩、災難だわ。
でも、本当はこのオレンジとさかだったと知ったら逆にヤバくねぇか。

 「俺が女の子に、B×Bの澪月だ。ってゆっちゃったから。」

あのとき集会にでてなかったから。と、自分を責めた。
その女は。と、問うと、もう振られた。と、いった。ため息。
だいたいどんな女がこいつに横取りされんだよ。
まじ、くっだんねぇ。

とりあえず、相手の男の素性はわかっているらしい。
放課後、相手の学校へ向かうことにした。
学校―――茅ケ崎市立D中学校。国道134号沿い。

いきなり会う可能性は低い。
知り合いを見つけて、連絡先を渡す。コールバック待ち。
そいつが連絡先を知ってれば、会う手筈をつけてもらう。
そう上手くはいかねぇだろうが。

 「で。なんでお前らもついてくんだよ。」

茅ヶ崎駅へ向かうJR車内。アホ空とボケ天を睨む。
オレンジとさかとアホ空はチビ同士意気投合。心強い。と、オレンジとさか。
ボケ天は、ヒマだから。と、一言。俺は舌打ち。
電車は無慈悲に到着を告げた。



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あとがき

コロナに豪雨。どーなってんでしょ、日本。いや、世界は。
でもそんなのカンケーねぇ。と、相変わらず妄想中の湘。

陽色登場!
父親譲りの誠実なコ。でしょ。(笑)
4枚目→Over The Top 0

ついでにヒマ人の湘は、トリオのらくがきもUP。
5枚目♪

いよいよ大詰め。えー。もうおわっちゃうのかぁ。と、僕が一番残念。(笑)
次は海空の話書こ♪
「空」おわらせろや。と、どっかから声が……


2021.8.15 湘




















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