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とさかは信じられねー程ケンカが弱かった。
目の前のタイマン―――いや、サンドバッグ。を見てため息。

アホそらが、もうやめてあげて。と、相手の男に願い出た。
ボケてんすら慈悲的に眉を下げた。

 「てめぇ、弱ぇくせに、よくタイマンなんていえたなぁ!」

朔弥さくや先輩を間違って殴った男。
幸か不幸かすぐにつかまった。学校で補習を受けていたのだ。
あの場にいた3人も一緒に居た。
4人とも俺のことは覚えていたが、とさかのことは知らないらしかった。
つまり、女からの情報―――B×Bビービー澪月れづき。のみで鉄パイプ。ってわけだ。
尋常じゃねぇ。バカだ。

とさかは、その女に渋谷でナンパされた。と、ここに向かう電車内で言った。
横取り。とはちがうじゃん。とのボケ天の突っ込み。
結果、彼氏がいたのなら、そういうことだ。と、変に潔いバカだった。
だから、自分が殴られるのは仕方ない。誤解は解きたい。と。

 「その辺で痛み分け。つーのは、どースか。」

とさかの状況を見て、俺はタイマンに一声かけた。
相手も殴り疲れて拳をふるうのも億劫そうだった。

 「ちっ。殴りがいのねー奴。何でこんな奴に。」

相手の男はバカだが、悪い奴じゃなさそうだった。
俺らの話を聞き、タイマンを受け入れた。
朔弥先輩の件も詫びた。族のトップにも。おそらく。

 「おい。気が済んだか。つーか、一発も当たんねーのかよ。」

俺は、ため息をついて、とさかに手を差し出した。
とさかは、うめきながら立ち上がる。
アホ空がセコンドさながらにペットボトルの水を手渡した。
確かにその風体。ボクシングか何かの試合後の様だが。

 「……ありがとう。うん、気が済んだ。わかってもらえて良かった。」

良くわからん。殴られ損じゃねぇのか。
相手の男すら呆れた顔。残りの3人も複雑な表情。

 「でも、その女。俺らにケシかけて行方くらますって。ひでぇよな。」

金髪の男が言った。
相手の男もナンパされたらしい。そして、その女は2人を振った。
俺はひっかかるモンを感じた。
つまり、女の意図。B×Bとこいつら平塚の族との抗争?推論。
考えすぎか?

ボケ天も察したらしい。
女の容姿を聞いた。俺らは、顔を見合わせる。
その女。渋谷で俺らが助けた女の一人。相違ない。
仕組まれたワナ―――黒幕は、ダレだ?

 「じゃ、ハメられたってコトかよ。」

相手の男が太い眉を上げた。
茅ヶ崎市立D中学校の向かい。茅ヶ崎パークヘッドランドビーチで男8人。
妙な展開でダベることになった。

とさかの相手―――堅汰けんた
ジャイアン風のガキ大将のナリ。でかい図体。
金髪、麟大郎りんたろう。愛嬌のある顔。チビ。
堅汰にいち早く加勢して、俺にワンパン食らわされた奴。

青メッシュのしゅう。長髪、さわやか男前。
あの時は、止めに入ろうとしていた。らしい。
天パーリーゼントの廉史朗れんじろう。線の細いのっぽ。無口。

俺が、女の素性がわかるかも。と伝え、ボケ天がトップに話そう。と言った。
皆うなづく。思いの外、話のわかる奴らだった。

 「流蓍 維薪なしき いしんくんてさ。たきぎさんの息子でしょ。」

柊の言葉。どうやらまたデジャブらしい。流蓍ってムズイよね。と、苦笑した。
麟大郎が愛嬌のある表情で、かっこいーすよね。と、親父を褒めた。
今は警察官でしょ。と、加える。

 「こっちは、海昊かいうさんの息子だ。」

俺が口調をマネて言ってやると、歓声。憧憬。体で示した。
アホ空は首を傾けたが、相変わらず秒でお友達モード。

そもそもB×Bと平塚の族―――湘南平塚連合。というらしい。
の関係は悪くない。
いや、明らかにB×Bが上。なんだそうだ。

柊が、こいつ、頭に血ぃ昇るとわけわかんなくなるんだ。
と、堅汰を指して、説明した。
そして加えた。

 「あのケリは効いたわ。強いね、維薪くん。」

柊は男前に笑った。

 「お前の兄ちゃんも男前だし、お前も根性あんな!」

堅汰は朔弥先輩が弟の為に全て認めて謝罪した事と、とさかの誠実さを褒めた。
背中を思い切り叩かれて、とさかは苦笑い。
豪快に笑った後、女もしくはその背景にいる奴、許せねぇ。と、意気まいた。

 「とりあえず。堅汰がでばると面倒だから。維薪くん、お願いしていい?」

平塚連合のトップにも話を通しておく。と、柊は言った。
話は、なんかキナ臭いし、大ごとになりそうだから。と、的を射た。
おそらく。何らかの陰謀。
そして、加えた。

 「どうせ龍月たつきくんも絡んでくるんでしょ。」

えっ。と、アホ空とボケ天も柊を見た。
柊は、自分の兄はK学の嵩原 諒たかはら りょうだ。
と、言い、龍月には世話になった。と、いった。

嵩原先輩は、K学高等部の生徒会長。
さらに総合格闘技部を立ち上げるのに尽力してくれた人。らしい。
確かにさわやかな感じが似ている。かも。

どうやらクソ龍月と関係があるらしいが、聞くのは面倒だからいーわ。
とにかく、氷風ひかぜに連絡。それから女の素性。

 「龍月くん。たまにB×Bに来てくれるっスよ。」

ぼこぼこの顔でとさかは笑った。俺は舌打ち。
策士龍月。どこでも有名人かよ。
アホ空は、さすがたっちゃん。と、理由なき称賛。
ボケ天はスマホを操作した。
クソ龍月に連絡。おそらく。
そしてそれは初じゃねー。ここに来るときにも来た後にも。状況報告。

すぐさま俺のスマホにも着信が来た。
グループLINE。
俺が無操作のままでいると、ボケ天が飄々と追加ボタンを押しやがった。
無表情で猫みてーなオッド・アイ。ボケ天を睨む。

グループメンバー。
龍月を筆頭に、氷風、未来空みらく。そして東華とうかTeddyテディLeeリー
探偵御一行様かよ。との俺のメッセージに次々と笑い。のスタンプ。
女の子、知ってるよ。とTeddy。クマのスタンプ。ピースサイン。

そういえば、あのときTeddyは謝っておく。と言っていた。つまり、知り合い。
氷風たちとTeddyたち。自己紹介はなかった。
話はすでに動いていた。か。

B×Bと東華。共通項の女。が判明したことで、クソ龍月がつないだ。
大手柄じゃん。とクソ龍月からのメッセージが証明。
策士龍月。と、心の中で悪態づいた。

 「頼むね、維薪くん。もし、必要なら。」

柊は相変わらずさわやかな笑みで言い残した。
もし必要なら連絡して。と、アホ空とボケ天とLINEをつなげたことを示唆。
堅汰ととさかは握手を交わし、また背中を叩かれてとさかは痛がった。
麟大郎は両手を大きく振って、廉史朗は頭を下げた。

 「よかったねぇ、無事済んで。」

アホ空が満面の笑みでとさかに頑張ったね。と、言った。
無事かどうかは知らんが。
巻き込まれてんのは確かだ。済んじゃいねぇ。
俺は心の中で吐き捨てた。

 「……てめぇ。うぜぇからやめろ。」

さっきからスマホがうるさい。
アホ空とTeddyがくまのスタンプが可愛いだの、何だの、盛り上がっている。
個人でやれ。
アホ空がごめん。と、舌をだした。
クソ龍月が追って連絡する。と、締めた後。

 「B×Bと東華。ハニートラップを仕掛けてまで、何がしたいんだろう。」

ボケ天が電車の天井を仰いだ。黒幕の意図。

 「B×Bとモメたい族なんて、この辺じゃいねースよ。」

何故か敬語でとさかは俺に言った。
確かに。
俺は、集会の時の様子を思い出す。
平塚連合のトップの態度。物語っていた。

 「東華にもなさそうだけど。」

と、ボケ天。
夏祭りの時の様子。
Teddyの無敵っぷり。Leeの非情さ。
こっちも同様。
この2チームを敵にまわしたい奴がいるとは思えない。
しかも同時期。

まぁ、女をシメりゃ状況は好転すんだろ。
今は邪推したってしかたねーし、時間の無駄。
俺は帰路に向かう電車内で目を閉じた。



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あとがき

ヒマ人の僕はイラスト書きまくってる。→Over The Top 0
6枚目、B×B。
7枚目、平塚連合。

皆カラフル♪(笑)
もっと絵も文もうまくなりたーい。
Cさまの素敵なイラストもまた待ってるね♪(笑)

さわやか柊は、冷静。
麟大郎は顔に似合わず実は性格悪し?
廉史朗は硬派な感じ?
堅汰は見た目そのままジャイアン的。でも豪快なバカ。悪い奴じゃない。カンジ。

湘は、意外と柊くんがお気に。
諒ちゃんをやっとからめた!いや、本人じゃないけど(笑)
伏線伏線(汗)どーしてこうも伏線だらけー。回収できるかー。(汗×2)

つぎつぎ新キャラ!ついてきてね!!


2021.8.20 湘




















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