ルール
            KとJの道理


                13


りぃくんの退院を待って、統括集会を開いた。
これない奴らは、LINEでつなげた。

 「東西抗争、皆おつかれ。……ありがとう。」

りぃくんが開口一番、皆を労った。
皆が退院おめでとうと、騒ぐ。
いつもの啖呵は?と、モンちゃんはつっこんだ。

僕は、皆の前に立った。
皆が静まり返る。

 「東京港心會とうきょうこうしんかいは、東華とうかの傘下に降る。大阪港心會おおさかこうしんかいの一部もだ。」

皆が歓声をあげる。

 「これで、実質東華は、関西に食い込んだ。総勢は、700を超える。」

うぉぉぉっ!!さらに大きな歓声。
LINEの向こう側の奴も負けじと声を張った。
僕は、事前に幹部で話し合った今後の組織―――上下関係。を皆に告知。
徹底させた。

まず、首領、No.1は僕。No.2がりぃくん。
幹部は、ニャンタとケンケン。ハチとタマ。そこは不変だ。

ニャンタは、生まれが新宿なので、副都心4区を任せる。
ケンケンの下には、都心3区と元関壱會もとかんいちかい
ハチには、23区東部と千葉。タマには、23区西部と埼玉。

ケンケンは、浅草が地場なので、ハチとも連携してもらう。
ニャンタには状況に応じてタマへの助言等をお願いした。

今回傘下に降った元東京港心會と元大阪港心會の一部。は、それぞれケンケンとニャンタに任せた。
東華の道理ルールを改めて流布する。
僕とりぃくんの道理ルール。いや、今や幹部、皆の道理ルールだ。

 「自由に称賛を、道理ルール違反に制裁を。」

でた。と、モンちゃんが茶化した。
りぃくんがバツの悪さを垣間見せたが、皆は乾杯!と声を揃えた。
土曜の夜だった。
普段は、曜日など気にもしないが、今日はどうしても呼びたい人がいたからだ。
丁度、チャイムがなった。モンちゃんが、オートロックを開けた。

僕は、玄関まで出迎える。

 「たっくん!!」

扉を開いて、いつのものように飛びついた僕を、たっくんは受け止めて、笑った。
いっくんに、あっくん。てんくん―――トリオ。もきてくれた。
人の多さにいっくんが眉をしかめて、あっくんがすごいね。と笑う。
天くんは軽く頭を下げて、靴を脱いだ。
各々自己紹介を済ませ、皆で食卓を囲う。皆、僕の仲間。いや、家族。だ。

 「それにしても、シシ。よくあっちが許したなぁ。」

ホースがシシたち元大阪港心會のメンバーが東華に入ったことを言った。
シシは、両頬にチキンを詰めたまま、意外にもあっさりやった。と、多分口にして、頷いた。
大阪港心會は、大阪港貿易会社から切られ、解散させられた。
首領だった牛岩うしいわと、No.2だった河豚ふくべ。その他数人は警察に捕まった。
残党をシシがまとめ上げ、東華の傘下に降った形だ。
とはいえ地場の大阪でのヤクザ関係の色々があるらしく、通常は関東の下につくなど許されることじゃないらしい。

 「ワイらは、飛龍ひりゅう組系舞雀まいづめ組のシマやねんけど、筋通しに行きよったら、飛龍組総統が直々にゆうてくれたんですわ。」

普通は、会えるはずもない雲の上の存在らしい、飛龍組総統。飛龍 海昊ひりゅう かいう
シシは口の中の物を呑み込んで、語った。
誰を慕うのも自由や。自分が決めたらええ。
そう、総統は言ったらしい。器が違う。と、皆が騒いだ。

日本一大きなヤクザ組織―――飛龍組。の総統は、広い心の持ち主なのかもしれない。
まぁ、もし僕の道理ルールに反するなら、ヤクザだろうが何だろうが、容赦なんてしないけど。

 「あ、それ。僕の父ちゃん。」

突然あっくんがそう口にして、皆の注目を集めた。
あっくんの本名―――飛龍 空月あつき。なるほど、納得。
一瞬遅れて、皆が、えっ―――!!!と、のけぞった。
僕は笑う。おもしろ。

 「あっくん、それってあんま言っちゃいけない情報じゃないの。」

僕の言葉にあっくんは、いっくんとたっくん、そして天くんに意見を求めるようにして、そうなの?と、きょろきょろと大きな瞳を動かす。
そして、でも皆、お友達だから。と、満面の笑み。
根っからの善人なんだ。

 「うっひょょょっ!!さすがTeddyテディ先輩。お友達もすげぇお人だ!」

ホースは奇声をあげてトリオに飲物を注いだ。
いっくんに挨拶をして、言う。

 「いっくんさんは、B×Bビービーの6番隊隊長さんなんスよね。」

ホースの変な呼び方に、いっくんは顔をしかめたけど、一応な。と、返答。
そうなの。と、僕は口にしてスマホを手に取った。
ひぃくんに連絡しないと。と口にする。

B×B―――湘南暴走族しょうなんぼうそうぞくBADバッド×BLUESブルース
トップは、ひぃくん―――滄 氷風あおい ひかぜ。六本木事件の時に共闘した仲だ。
いっくんは、いらねぇ。と、言ってくれたけど、それじゃあ僕の道理ルールに反す。

 「お久。ひぃくん、元気?」

ひぃくんは、知っていたようで、問題ない。と言ってくれた。
今回の件でいっくんを借りたこと。
スピーカーにしたやり取りにいっくんが眉をしかめた。

 「維薪いしんは遊軍扱いだから。奴は奴の意志で動いたんだろ。わざわざ連絡くれたのか。Teddy、さんきゅ……」

 「遊軍だって?」

いっくんが口を挟むと、おわっ、いんのかよ、維薪。と、ひぃくん。
いっくんはニヒルに笑って、じゃ、今後も遊ばせてもらうわ。と、鼻をならした。

通話を切った後。
例によってホースが、B×Bのトップとお友達なんて。
と、感激の涙を流していた。

ホースは、元東京港心會のトップということだけあり東京や関東の不良ワルの事を熟知している様だ。
いや、私情のような気もするが。
自称、不良辞典。

ひぃくんが借りがある。と僕に言った事を、令和維新・・・・の事っスよね。と、得意気に説明し出した。
10月末。B×Bの内輪もめに六本木事件の巳嵜みざきが関わっているとたっくんから聞いて、少し協力をした。

 「知っていますよ。いっくんさんの武勇伝!ひぃくんさんを助けるためにB×Bの二代目と対峙。B×Bのトップになるかと思いきや、ひぃくんさんをたてて6番隊隊長。くぅっっ!かっけぇすよ、いっくんさん!!」

ちょっと違ぇけど、まぁいいや。と、いっくんがぼそり。
つーか、てめぇの借りを俺で返しやがって。と、ひぃくんに対して悪態づいた。

 「……改めて、ありがとうな。維薪。空月あつき天羽てんう。そして、龍月たつきさん。」

りぃくんの真面目な礼にいっくんは、咳払い。
楽しかったし。と、口にした。
たっくんは、相変わらず何でも知っているような優しい笑顔。
天くんは、どこ吹く風で食べ物を口に運んでいるけど、戦いのときの剣術には、ケンケンも称賛するほどだ。
あっくんは、当然だよ。と、笑ってくれた。

皆、強い。そして、優しい。
僕は、本当に仲間に恵まれている。だから、これからも進んで行ける。
僕の道理の下で。
雅楽うた。見ててくれよ、兄ちゃん、頑張るからね。
もう、コメカミの傷。痛くなんか、ない。

 「なあ、天羽。手合わせ頼むよ。」

 「維薪。一回タイマンやろうぜ。」

ケンケンとハチ。
タマが、物騒ですねぇ。と、あっくんに話を振った。
ケンケンにドヤ顔で空月だって相当だぞ。と、言われ固まった。
あっくんは、顔の前で手を振ったけど、キャットウォークまで壁を登ったり、その後の敵との立ち回り。 希映のえを守りながらの戦い。ケンケンは並の奴じゃできない。と、絶賛。

 「見てましたよ〜!あっくんさんも、天くんさんも。強いのなんのって!」

ホースがまた茶々を入れて、自慢の不良情報を開示した。
六本木事件では、あっくんが驚異の身体能力を駆使し、ネット回線を復旧させたことや、天くんが銃をもつ大人相手10人以上と対峙したこと。
見てきたようにいった。

 「……そこまでいくと、何か、すごいね。」

たっくんも呆れて、いっくんは、ストーカーだろ。と、悪態づく。
天くんは無関心で、あっくんは、すごいね!と笑った。

 「やぁ、褒めてもらえて嬉しいっス!さらにあっくんさんは、飛龍家の御子息で、いっくんさんは、公安トップの息子さんっスよね!」

さらり、と爆弾発言をしたホースにニャンタがはたいたが、皆は再びのけぞった。
そう、いっくんのお父さんは、警察なんだ。
いっくんは、ニャンタの気遣いに、別に隠すことじゃない。と、泰然、毅然。
天くんもあっくんのイトコと聞いている。つまり、ヤクザ家系。

警察とヤクザ。
本当に面白いトリオだ。
肩書なんて関係ない。思い。が、一緒なのだ、きっと。
りぃくんも穏やかな笑みで僕を見た。

 「うん。やっぱりいいね。」

僕は、皆の前に立って大きく手を広げた。
皆が僕を注目する。LINEでつながる仲間たちにも視線を配る。
大きく深呼吸。

 「皆!!これからも僕のワガママにつきあってもらうからね!!」

いつもの事。と、りぃくん。今さら。と、ニャンタ、ケンケン。
わがまま上等。と、ハチ。それがTeddy。と、タマ。
口々に呟いた。

 「こかれからもどんどん仲間は増える。でも、東華の根っこ、道理ルールは絶対変わらない!皆!僕に一生ついてこい!!」

おおぉっ―――!!と、雄叫び。
僕は、本日最高の笑みで、皆、大好きだよ!!と、声を張った。

その後。
この東西抗争は、東西事変と呼ばれ、東華の名前は関西まで轟いた。



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